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環境と栄養 〜暑熱・寒冷・高地での栄養管理~

あいさつ

どうも、おはようございます。こんにちは。こんばんは。

 

AK-TONBOです。

 

前回はオフシーズンの食事戦略ということで、「休む」と「作り直す」を同時にやるための3フェーズを書きました。

 

オフの時にの食事を少しでも気にかけてみようかな?

 

と思った方が出てきてくれれば幸いです。

 

して。

 

今回のテーマは 「環境と栄養〜暑熱・寒冷・高地での栄養管理〜」 です。

 

またマニアックな…

 

と思われがちですか、知らないだけで内容はそこまでマニア向けではありません。

 

と言うのも、「栄養管理」と聞くと食品・栄養素の話になりがちですが、同じ食事をしていても、環境が変わると身体への影響が大きく変わるという視点が抜けていることが多いからです。

 

夏の炎天下での練習・冬の寒冷地でのトレーニング・高地合宿——環境が変わると、エネルギー消費量・水分損失・必要な栄養素の種類と量が変わります。

 

このせいで「いつも通りの食事」が通用しない場面があるんですね。

 

夏合宿に行ったとき、最初の2〜3日で明らかに動けなくなった。

 

みたいな経験がある方もいるのではないでしょうか?

 

「暑さに慣れていないだけ」と思いがちですが、水分補給と塩分の管理に加えて、暑熱環境における栄養管理をしていなかったから。

 

という可能性もあったかもしれません。

 

環境によって栄養も少し変わってくる。

 

その辺りの知識を今回はご紹介していきたいと思います。

 


環境と栄養〜暑熱・寒冷・高地での栄養管理〜


まず「環境が身体に与えるストレス」を理解する

どんな環境でも、身体は「内部環境の恒常性(ホメオスタシス)」を保とうとします。

 

体温・血液の浸透圧・pH——これらを一定に保つために、環境が過酷になるほど多くのエネルギー・栄養素・水分が消費されます。

 

お分かりですね。

 

つまり、環境ストレスが大きいほど栄養の需要が増えるということです。

 


【暑熱環境】夏・炎天下・高温多湿での栄養管理

暑熱環境が身体に何をするか

気温・湿度が高い環境では、身体は体温を下げるために発汗を増やします。

 

汗をかくことで気化熱を利用して体温を下げる——これは身体の賢い体温調節機能ですが、同時に大量の水分・電解質が失われます。

 

暑熱環境での主な問題

  • 脱水(水分損失)
  • 電解質の損失(ナトリウム・カリウム・マグネシウム)
  • 体温上昇によるパフォーマンス低下
  • 食欲低下(消化機能が落ちる)
  • ビタミンB群の消耗(エネルギー代謝の亢進)

 

①水分補給:暑熱環境の最優先課題

水の回・水分補給の深堀りの回で書きましたが、暑熱環境では通常より大幅に多い水分補給が必要です。

 

発汗量は個人差がありますが、激しい運動中は1時間に1〜2Lの汗をかくことがあります。

 

体重の2%の脱水でパフォーマンスが低下することはこのブログで何度も書いてきましたが、暑熱環境ではその脱水が非常に速いスピードで進みます。

 

目安として、練習前後に体重を測って差を確認する方法が有効です。

 

1kgの体重減少はおよそ1Lの水分損失。

 

その分を補給することが目標になります。

 

ただし飲み方にも注意が必要です。

 

一度に大量に飲むと胃腸への負担になります。

 

15〜20分ごとに150〜250mlをこまめに飲むのが基本となります。

 

②電解質:水だけでは足りない

暑熱環境で特に問題になるのがナトリウムの損失です。

 

汗にはナトリウム(塩分)が含まれています。

 

水だけを大量に飲んで塩分を補わないと、血液中のナトリウム濃度が薄まり「低ナトリウム血症」のリスクがあります。

 

症状は頭痛・吐き気・倦怠感・最悪の場合は意識障害です。

 

暑熱環境での長時間運動では、電解質(特にナトリウム)を含んだ飲料か、食事・塩分補給タブレットで塩分を補うことが必要です。

 

梅干し・塩タブレット・塩分入りスポーツドリンク——暑熱環境での塩分補給手段として覚えておいてほしいです。

 

またカリウム・マグネシウムも発汗で失われます。

 

カリウムはバナナ・アボカド・きゅうり、マグネシウムはナッツ・大豆・海藻から補給できます。

 

③ビタミンB群:エネルギー代謝の亢進に対応する

暑熱環境では体温調節のためにエネルギー消費が増え、ビタミンB群(特にB1・B2)の消耗が増えます。

 

食欲がないときの栄養術の回で書いた夏バテの話とも重なりますが、夏はビタミンB1不足になりやすいです。

 

素麺・冷やし中華・うどんなど、夏に食べやすい炭水化物を多く食べると、その代謝にB1が消費されます。

 

豚肉・大豆・ナッツでB1を補うことを意識してほしいです。

 

④食欲低下への対策

暑熱環境では消化機能が低下して食欲が落ちます。

 

「食べないといけないのに食べられない」という夏特有の問題です。

 

対策は食欲がないときの栄養術の回で書いたことが基本ですが、暑熱環境特有の工夫として

  • 冷たいもの・さっぱりしたものから入る:冷奴・ヨーグルト・スムージー・冷やし茶漬けなど
  • 酸味を活用する:レモン・梅干し・酢は食欲を刺激する
  • 香辛料を少量使う:生姜・ミョウガ・大葉は消化を助け食欲を促進する
  • 一度に食べる量を減らして回数を増やす:3食より4〜5回に分けて少量ずつ

 

以上のことがあげられます。

 

⑤熱中症予防のための食事

熱中症は栄養管理と直接関係します。

 

予防として最重要なのは食事をきちんと摂ることです。

 

空腹・低血糖の状態は熱中症のリスクを高めます。

 

また、朝食を抜くと午前中の体温調節が不安定になります。

 

「練習前に食べると気持ち悪い」という場合も、バナナ・おにぎり・スポーツゼリーなど消化の良いものを少量でも摂ることが重要です。

 


【寒冷環境】冬・低温・屋外での栄養管理

寒冷環境が身体に何をするか

気温が低い環境では、身体は体温を維持するために熱産生を増やします。

 

震え(筋肉の収縮による熱産生)・代謝亢進——これらによって基礎代謝が上昇します。

 

寒冷環境での主な問題

  • エネルギー消費量の増加(体温維持のため)
  • 水分補給の意識低下(暑くないので喉が渇きにくい)
  • 免疫機能の低下(乾燥・日照不足)
  • ビタミンD不足(日照時間の短縮)

 

①エネルギー:冬は多く食べる必要がある

寒冷環境では体温を維持するための熱産生コストが上がるため、同じ活動量でも消費カロリーが夏より高くなります。

 

「冬は食欲があるから自然と多く食べられる」というのは、実は身体の正しい反応です。

 

寒い季節に食欲が増すのは、増加したエネルギー消費に対応するための生理的な反応といえます。

 

寒冷環境でのトレーニング・屋外スポーツでは、カロリー摂取量を意識的に増やす必要があります。

 

特に炭水化物と脂質でエネルギーを確保することが重要です。

 

寒冷環境での脂質は体温維持にも使われます。

 

なので極端な低脂質食は寒冷環境でのパフォーマンスに悪影響を与えることがあります。

 

②水分補給:見落とされがちな冬の脱水

「冬は汗をかかないから水分補給は少なくていい」——これは危険な誤解です。

 

寒冷環境でも呼気(息)から大量の水分が失われます。

 

冬に白い息が見えるのは、体内の水分が呼気として放出されているからです。

 

また、乾燥した環境では皮膚からの水分蒸散も増えます。

 

「汗をかいていないから大丈夫」という感覚は当てにならないです。

 

寒くても水分補給を意識的に行うことが重要です。

 

温かい飲み物(お湯・白湯・スープ・味噌汁)は水分補給と保温を同時に担えるので、寒冷環境での水分補給手段として優秀です。

 

③ビタミンD:冬は不足しやすい

日照時間が短くなる冬は、皮膚でのビタミンD合成が大幅に落ちます。

 

免疫と栄養の回でも書きましたが、ビタミンD不足は免疫低下・骨密度低下・疲労骨折リスク上昇につながります。

 

冬に風邪をひきやすくなる原因のひとつがビタミンD不足という話は、免疫と栄養の回で書いたとおりです。

 

 

対策:鮭・さんま・いわし・卵黄・干しシイタケを積極的に食べる。

 

日照時間が限られる冬は、食事からのビタミンD補給が特に重要になります。

 

④鉄:寒冷環境での筋肉の酸素利用

低温環境では筋肉が冷えて、酸素利用効率が落ちます。

 

鉄は酸素運搬に関わるヘモグロビンの材料なので、鉄不足があると寒冷環境でのパフォーマンスへの影響がより大きく出る可能性があります。

 

寒い時期に貧血気味の選手は、パフォーマンスが余計に落ちやすいということを頭に置いておいてほしいです。

 

意外と知らなかったのではないでしょうか?

 

⑤免疫:冬は感染症リスクが高い

乾燥・低温・日照不足——冬は免疫が落ちやすい条件が重なります。

 

免疫と栄養の回で書いた内容がすべてここで重要になります。

 

ビタミンC・亜鉛・ビタミンD・タンパク質——冬こそこれらを意識して摂ることが、コンディション維持の鍵です。

 


【高地環境】高地合宿・山岳地帯での栄養管理

高地環境が身体に何をするか

標高2000m以上の高地では、大気中の酸素分圧が低くなります(空気は薄くなる)。

 

結果、身体はこの「低酸素」環境に適応しようとして、様々な変化が起きます。

 

高地環境での主な問題

  • 低酸素による高山病(頭痛・吐き気・食欲不振・倦怠感)
  • エネルギー消費量の増加(低酸素への適応コスト)
  • 食欲低下(高山病・低酸素の影響)
  • 脱水リスクの上昇(呼気からの水分損失増加・乾燥)
  • 鉄の需要増加(赤血球産生が増える)

 

①エネルギー:高地では多く必要だが食べにくい

高地では低酸素への適応のためにエネルギー消費が増えますが、同時に食欲が落ちます。

 

またもや「食べないといけないのに食べられない」というジレンマ発生です。

 

対策は暑熱環境と同様——少量で栄養密度の高いもの・食べやすいものを選ぶことです。

 

炭水化物の消化・代謝は低酸素環境でも比較的維持されるため、炭水化物を中心にエネルギーを補給するのが高地での基本戦略となります。

 

脂質は代謝に酸素を多く必要とするため、高地では炭水化物の方が効率的なエネルギー源です。

 

②鉄:赤血球産生が増えるため需要が上昇

高地合宿の目的のひとつは、低酸素刺激によって赤血球(ヘモグロビン)の産生を増やし、酸素運搬能力を高めることです。

 

赤血球を作るには鉄が必要です。

 

高地合宿中は鉄の需要が通常より増加するため、事前から鉄をしっかり蓄えておくこと(フェリチンを高めておくこと)が重要です。

 

高地合宿前の血液検査でフェリチン値を確認して、低い場合は事前に食事・サプリで補充しておく準備をするのが理想的です。

 

貧血とスポーツの回で書いたフェリチンの話がここで直接つながりましたね。

 

③水分補給:乾燥と過呼吸の組み合わせが危険

高地は空気が乾燥していることが多く、また低酸素に対応するために呼吸数が増えます(過呼吸気味になる)。

 

その結果、呼気からの水分損失が平地よりも大幅に増えます。

 

「高地では喉が渇きにくい」という感覚がある人もいますが、実際には水分損失は増えています。

 

そのため、意識的に水分補給の量を増やすことが必要です。

 

目安として、高地滞在中は平地より1日500ml〜1L程度多く水分を摂ることを意識してください。

 

④抗酸化物質:高地では酸化ストレスが増える

低酸素環境→過呼吸→活性酸素の発生増加、という流れがあり、高地では酸化ストレスが通常より高くなります。

 

ビタミンC・E・ポリフェノールなどの抗酸化物質を高地滞在中は意識して摂ることが、細胞ダメージの軽減につながります。

 

⑤高山病の予防と栄養

高山病(頭痛・吐き気・食欲不振・睡眠障害)は、急速な高地への移動で起きる身体の適応反応です。

 

栄養的な予防策としては

  • 水分をしっかり摂る
  • 炭水化物を中心にこまめに食べる
  • アルコールを避ける(血中酸素をさらに下げる)
  • カフェインは控えめに(利尿・脱水のリスク)

 

高山病になったら無理に食べようとせず、水分補給・安静を優先してください。

 

高山病になったら無理に食べようとせず、水分補給・安静を優先します。


環境別:栄養管理のポイント早見表

環境 最重要ポイント 増やすべきもの 注意すること
暑熱 水分・電解質補給 水・塩分・カリウム・B群 低ナトリウム血症・熱中症
寒冷 エネルギー・ビタミンD カロリー・ビタミンD・鉄 冬の脱水を見落とさない
高地 鉄・水分・炭水化物 鉄・水・炭水化物・抗酸化物質 食欲不振・高山病・脱水
 

おわりに

「いつも通りの食事をしていれば大丈夫」——これは平地・常温・通常の練習環境での話です。

 

環境が変わると、身体が必要とするものも変わります。

 

夏合宿・冬季合宿・高地合宿——それぞれの環境に合わせた食事戦略を持っている選手と、「環境が変わっても食事は関係ない」と思っている選手では、合宿中のパフォーマンスと回復速度に差が出てきます。

 

環境に合わせて食事を変える、というのも立派な栄養管理のスキルです。

 

以上、AK-TONBOでした。