あいさつ
どうも、おはようございます。こんにちは。こんばんは。
AK-TONBOです。
前回は牛乳論争ということで、「牛乳は体に悪い」という説を一つずつ検証して、スポーツマンにとっての牛乳の立ち位置を整理しました。
極端な情報に振り回されず、自分の体の反応を見ながら判断する。
これって牛乳に限らず、栄養全般に通じる大事な姿勢かなと思います。
して。
今回のテーマですが、前回に続き飲み物系。
アルコールとスポーツ 〜飲んだ次の日、体の中で何が起きているか〜
ということでやっていきたいと思います。
スポーツをやっている人でも、お酒を飲む人はたくさんいます。
大学生なら飲み会、社会人なら付き合いや晩酌。
「練習頑張ったご褒美に一杯」という人もいるでしょう。
僕はそれを否定するつもりは全くありません。
シンプルに楽しいですし、いいコミュニケーションの場になりますからね。
ただ
「飲んだ次の日、体の中で何が起きているか」を知っているのと知らないのとでは、付き合い方が変わってきます。
今回はアルコールがスポーツマンの体に与える影響を、代謝のメカニズムから一つずつ見ていきたいと思います。
まずアルコールは体内でどう処理されるのか
影響の話に入る前に、アルコールが体内でどう代謝されるかを確認しておきましょう。
口から入ったアルコール(エタノール)は、胃と小腸で吸収されて肝臓に運ばれます。
そして、肝臓では2段階で分解されます。
まずADH(アルコール脱水素酵素)によってエタノールがアセトアルデヒドに変換されます。
このアセトアルデヒドが曲者で、毒性が強く、二日酔いの頭痛・吐き気・動悸の主犯です。
顔が赤くなる、気持ち悪くなるのもこいつのせいです。
次に**ALDH(アルデヒド脱水素酵素)**によってアセトアルデヒドが無害な酢酸に変換され、最終的に水と二酸化炭素に分解されて体外へ出ていきます。
ここで重要なのが、この分解には時間がかかるということ。
体重60〜70kgの人で、純アルコール約20g(ビール中瓶1本・日本酒1合程度)の分解に約3〜4時間かかると言われています。
つまり夜に何杯か飲むと、寝ている間ずっと肝臓はアルコール処理にかかりきりになります。
そしてこの「肝臓がアルコール処理で忙しい」という状態が、これから説明する様々な問題の出発点になります。
【影響①:筋タンパク合成(mTOR)が抑制される】
筋肉を作りたい人にとって一番痛いのがこれです。
以前、筋トレ×有酸素の記事でmTORの話をしました。
筋タンパク合成を促進するスイッチでしたね。
研究では、運動後にアルコールを摂取するとmTORの活性化が抑制され、筋タンパク合成率が低下することが示されています。
ある研究では、筋トレ後にアルコールを摂取したグループは、摂取しなかったグループに比べて筋タンパク合成率が約30〜40%低下したという結果が出ています。
えぐいですね。
さらに注目すべきは、この研究でアルコールと一緒にタンパク質をしっかり摂っても、合成率の低下を完全には防げなかったという点です。
つまり「プロテイン飲んでるから大丈夫」とはいかないわけです。
せっかく追い込んだトレーニングの効果を、その日のお酒が削ってしまう。
ちょっと悲しい現実です。
脳筋なら
「下がる30~40%分上昇させて、130%~140%でやればいい!」
とか言いそうですけど……
絶対にやめてください。
【影響②:テストステロンが下がり、コルチゾールが上がる】
睡眠の記事・オーバートレーニングの記事でも何度も出てきたお馴染みのコンビです。
テストステロンは筋肉を作るホルモン、コルチゾールは筋肉を壊すストレスホルモンでしたね。
アルコールはこの2つに対して、見事に最悪の方向に働きます。
テストステロンの低下:アルコールは精巣でのテストステロン産生を直接抑制します。さらにアセトアルデヒドがテストステロンの合成を妨げます。大量飲酒後はテストステロンが一時的に大きく低下することが確認されています。
コルチゾールの上昇:アルコールの代謝は体にとってストレスであり、コルチゾールの分泌を促します。
「筋肉を作るホルモンが下がって、壊すホルモンが上がる」。
睡眠不足の回でも出てきたダブルパンチが、ここでも起きるわけです。
しかもお酒を飲むと夜更かしになりがちなので、睡眠不足のダブルパンチと重なって、実質クアドラプルパンチみたいなことになります。
蛸殴りですね。
【影響③:脱水が進む】
「お酒を飲むとトイレが近くなる」という経験、誰にでもありますよね。
これはアルコールに利尿作用があるからです。
アルコールはバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌を抑制します。
バソプレシンは「体から水を逃がさないようにする」ホルモンなので、これが抑えられると尿がどんどん作られます。
ビールを飲むと、飲んだ量以上の水分が尿として出ていくこともあります。
つまりお酒を飲んでいるのに、体は脱水に向かっているという矛盾した状態です。
二日酔いの頭痛の一因はこの脱水でもあります。
そして脱水状態は、翌日のパフォーマンス低下・筋肉の攣り・回復の遅れに直結します。
水分補給の重要性については近いうちに別記事でも詳しくやりたいところですが、お酒の席では「飲んだお酒と同じくらいの水を飲む」を意識するだけでだいぶ違います。
【影響④:睡眠の質が下がる】
これは睡眠の記事でも少し触れました。
「お酒を飲むとよく眠れる」は錯覚です。
確かにアルコールには寝付きをよくする作用があります。
でも問題はその後です。
アルコールが分解される過程で睡眠の後半が浅くなり、深いノンレム睡眠が減少します。
睡眠の記事で説明した通り、成長ホルモンの70〜80%は深い睡眠で分泌されます。
つまりお酒を飲んで寝ると、筋肉の回復に最も重要な成長ホルモンの分泌が妨げられるわけです。
さらにアセトアルデヒドの影響やトイレで目が覚めることもあって、途中覚醒が増加。
「寝たのに疲れが取れない」という二日酔いのあの感覚は、睡眠の質が落ちている証拠だった訳ですね。
寝付きの良さと睡眠の質は別物です。
ちなみに僕は飲み会以外ではお酒を飲みません。
なぜかって?
翌日の体のだるさが死ぬほど不快だからです。
【影響⑤:グリコーゲンの回復が遅れる】
激しい運動の後、筋肉のグリコーゲン(エネルギー貯蔵)は大きく減っています。
翌日のパフォーマンスのためには、これを回復させる必要があります。
ところがアルコールは、肝臓での糖新生(グリコーゲンの再合成)を妨げます。
肝臓がアルコール処理で手一杯になり、糖を作る作業が後回しになるイメージです。
その結果、運動後にお酒を飲むとグリコーゲンの回復が遅れ、翌日も体が重い・力が出ないという状態になりやすくなります。
特に連日練習や連戦がある時期は、この回復の遅れがじわじわ効いてきます。
【じゃあ、スポーツマンは一切飲んじゃいけないのか?】
ここまで散々アルコールの悪影響を並べてきました。
「もう飲むなってことか」と思った人もいるかもしれません。
いや、ここまでデメリット言ってると実際半分そんなもんか?
……いやいや! でも僕はそこまで原理主義的なことを言うつもりはありません。
お酒は栄養素である以前に、人との付き合いや、人生の楽しみの一部でもあります。
大事なのは「ゼロか100か」ではなく、ダメージを理解した上で、賢く付き合うことです。
ポイントを整理します。
トレーニング直後の飲酒は避ける:mTOR抑制・グリコーゲン回復阻害の影響が最も大きいのが運動直後です。どうしても飲むなら、運動と飲酒の間に時間を空け、先に食事とタンパク質・炭水化物をしっかり入れてからにしましょう。
量をコントロールする:影響は基本的に量に比例します。純アルコール20g程度(ビール中瓶1本・日本酒1合・ワイングラス2杯程度)までなら、影響は比較的限定的です。問題は深酒です。
重要な試合・大会前は控える:脱水・睡眠の質低下・回復の遅れを考えると、大事な試合の数日前は飲まないのが無難です。
水を一緒に飲む:脱水対策として、お酒と同量以上の水を。チェイサーは気休めではなく、ちゃんと意味があります。
空腹で飲まない:空腹時の飲酒は吸収が速く、血中アルコール濃度が急上昇します。胃に何か入れてから飲みましょう。
【飲んだ次の日にやるべき栄養リカバリー】
「昨日飲みすぎた」という日も、人間ですからあります。
そんな翌日のリカバリー戦略も置いておきます。
水分と電解質の補給:まず脱水のリセット。水だけでなく、ナトリウム・カリウムを含む経口補水液やスポーツドリンクが効果的です。
タンパク質をしっかり摂る:低下した筋タンパク合成を立て直すため、いつも通り、あるいは少し多めにタンパク質を確保しましょう。
ビタミン・ミネラルの補給:アルコール代謝でビタミンB群・マグネシウム・亜鉛が消費されます。豚肉・卵・ナッツ・緑黄色野菜などで補給を。
無理に追い込まない:二日酔いの日は脱水・睡眠不足・グリコーゲン不足が重なった状態です。高強度練習は逆効果になりやすいので、軽めの調整に留めるのが賢明です。
しじみの味噌汁が二日酔いに効くという話はよく聞きますが、これはオルニチンという成分が肝臓の働きを助けるとされているからです。
汁物は水分・電解質補給にもなるので、理にかなった選択ではあります。
まとめ
- アルコールは肝臓でアセトアルデヒド(二日酔いの主犯)を経て分解され、処理に数時間かかる
- 運動後の飲酒は筋タンパク合成(mTOR)を約30〜40%低下させる。プロテインを摂っても完全には防げない
- テストステロンが下がり、コルチゾールが上がる「筋肉を壊す方向」のホルモン変化が起きる
- バソプレシン抑制による利尿作用で脱水が進む
- 寝付きは良くなるが睡眠の後半が浅くなり、成長ホルモンの分泌が妨げられる
- 肝臓がアルコール処理に忙しくなり、グリコーゲンの回復が遅れる
- 純アルコール20g程度までならダメージは限定的。問題は深酒と運動直後の飲酒
- 重要な試合前は控える、水を一緒に飲む、空腹で飲まないが現実的な対策
- 飲んだ翌日は水分・電解質・タンパク質・ビタミンの補給を意識し、高強度練習は避ける
おわりに
お酒って、不思議なものです。
体にとっては明らかにマイナスなのに、人と人を繋いだり、一日の疲れを流してくれたりする側面もあります。
健康面を直視するのであれば「飲むな」と言うのが正解なのかもしれません。
でも僕は、それを言うのはちょっと違う気がしています。
大事なのは、ダメージをちゃんと理解した上で、自分で選ぶこと。
「今日は大事な練習の前だからやめておこう」
「今日は思いっきり楽しもう、その代わり明日はしっかりリカバリーしよう」
そうやって自分でコントロールできるなら、お酒は人生の楽しみのままでいられます。
知った上で付き合うか、知らずに飲み続けるか。
その差は、長い目で見ると意外と大きいんじゃないかと思います。
それでは、よいお酒を。
以上、AK-TONBOでした。……お酒はほどほどにね。