あいさつ
どうも、おはようございます。こんにちは。こんばんは。
AK-TONBOです。
前回はオーバートレーニング症候群とコルチゾールということで、頑張り屋のアスリートが陥りやすい「練習しすぎ」の罠とその栄養対策を解説しました。
練習への熱量を少しだけでもいいので食事に向けてあげてください。
体づくりも立派な練習。体調管理も試合に向けた調整という意味で立派な練習です。
して。
今回のテーマになりますが…
筋トレ×有酸素の順番問題 ~「どちらを先にやるか」で体の変わり方が変わる~
です。
筋トレも有酸素運動もやっている人が必ず一度は悩む問題ではないでしょうか?
同じ日に両方やるとき、筋トレを先にすべきか、ジョギングを先にすべきか…
「なんとなく筋トレ先のほうがいい気がする」という人もいれば、「ウォームアップに有酸素をやってから筋トレしてる」という人もいると思います。
「筋トレ後に有酸素をやると脂肪が燃えやすいと聞いた」「有酸素で疲れてから筋トレすると追い込めない」「そもそも同じ日にやらないほうがいいのでは」
なんて声も聞きます。
なので今回は、「干渉効果」「AMPK」「mTOR」という軸を入れて、目的別の答えを出していければと思います。
「干渉効果」とは何か:問題の核心
筋トレと有酸素を同日に行うと、一方の効果がもう一方を打ち消す可能性があるというのが「干渉効果(Concurrent Training Interference)」と呼ばれる現象です。
1980年に運動生理学者のロバート・ヒックソンが行った研究が出発点になります。
内容は、筋トレのみ・有酸素のみ・両方の3グループを比較した結果、「両方のグループ」では筋トレのみのグループに比べて筋力向上が劣るというものでした。
この研究以来「筋トレと有酸素は同日にやるな」という説が広まりましたが、実際はそんなに単純な話ではありません。
干渉効果が「どの程度・どういう条件で・誰に起きるか」をきちんと理解することが重要です。
なぜ干渉が起きるのか:AMPKとmTORの拮抗
干渉効果のメカニズムを理解するには、2つのタンパク質の働きを知る必要があります。
【mTOR:筋肉を作るスイッチ】
**mTOR(エムトール)**は細胞内のシグナル伝達タンパク質で、筋タンパクの合成を促進するスイッチです。
筋トレの刺激・タンパク質の摂取・インスリンなどによって活性化されます。
筋トレをするとmTORが活性化され、筋肉の修復・成長のプロセスが始まります。
そのため筋肉を大きくしたいなら、このスイッチをいかに効率よくONにし続けるかが重要です。
【AMPK:エネルギー不足のセンサー】
AMPK(エーエムピーケー)は細胞内のエネルギーセンサーです。
ATPが消費されてAMPが蓄積するとAMPKが活性化。AMPKが活性化するとミトコンドリアの新生・脂肪酸酸化・グリコーゲン合成の促進が起きます。
つまり何が言いたいかと言いますと、持久力の向上・脂肪燃焼に関わる適応を引き起こすスイッチと言った感じです
有酸素運動をすると大量のATPが消費され、AMPKが強く活性化されます。
【2つのスイッチは拮抗する】
そして問題はここです。
AMPKはmTORの活性化を抑制します。
分子レベルで2つのスイッチはお互いの働きを弱め合う関係にあります。
有酸素運動でAMPKが活性化した状態でそのまま筋トレをすると、mTORの活性化が抑えられて筋肉合成の効率が下がる可能性があります。
これが干渉効果の分子メカニズムとして現在最も支持されている仮説です。
はへ~。僕自身ここまでのメカニズムはこうしてまとめるまでは知りませんでした。
実際の研究はどう言っているか
「理論的にはそうだが、実際はどうなのか」というのが大事ですよね。
最新のメタアナリシス(複数研究をまとめた分析)では、干渉効果の影響は当初考えられていたほど大きくないという見方が強まっています。
同日に筋トレと有酸素を行っても、別々の日に行う場合と比べて筋力・筋肥大の差は小さいという報告が多くなっています。
ただし条件によって差が出ます。
干渉効果が大きくなる条件として:
- 有酸素の強度・時間が高い(長時間・高強度ほど影響が大きい)
- 有酸素と筋トレの間隔が短い(直後よりも6時間以上空けると干渉が減る)
- 有酸素がランニング系の場合(サイクリングよりランニングのほうが筋への干渉が大きい傾向)
- 筋トレの量・強度が高い時期(オーバーロード期間中)
逆に干渉効果が小さくなる条件:
有酸素が低〜中強度・短時間、有酸素と筋トレの間に十分な時間がある、初心者・中級者(上級者ほど干渉の影響が出やすい傾向)。
目的別の正解:何を優先したいかで答えが変わる
ここからが実践的な話です。
「筋トレ先か有酸素先か」の答えは目的によって変わります。
【目的①:筋肥大・筋力向上を最優先したい】
筋トレを先にやるが正解です。
筋トレを先に行うことで、mTORの活性化が最大化された状態でトレーニングができます。
後から有酸素をやってAMPKが活性化しても、筋トレのタイミングでは干渉を受けていません。
また、筋トレを先にやることでグリコーゲンを使い切った状態で有酸素に入れるため、有酸素中の脂肪酸利用割合が高まるという副次効果もあります。
筋トレ後の有酸素は疲れている状態でやることになりますが、それは問題ではありません。
有酸素の目的が「脂肪燃焼・心肺機能の維持」であれば、強度を落としても効果は得られます。
【目的②:持久力向上・有酸素パフォーマンスを優先したい】
有酸素を先にやるが合理的です。
高い強度で有酸素のトレーニングをしたいなら、疲れていない状態でやるべきです。
マラソン・トライアスロン・サッカー・バスケなど有酸素能力が競技パフォーマンスに直結する競技者はこちらがいいかと。
有酸素後に筋トレをすると筋トレの強度は落ちますが、筋力向上が主目的でなければ許容範囲内です。
【目的③:体脂肪を減らしたい】
筋トレを先にやるが有利です。
筋トレでグリコーゲンを消費した後に有酸素に入ると、エネルギー基質が脂肪に切り替わりやすい状態になります。
「筋トレで糖を使い切ってから脂肪を燃やす」という流れです。
ただし以前の糖質制限記事でも書きましたが、脂肪燃焼は運動中だけでなく24時間トータルのエネルギー収支で決まります。
「有酸素で脂肪を燃やす」ことに過度にこだわるより、1日のカロリーバランスを管理することのほうが重要です。
【目的④:体組成改善(筋肉を増やしながら脂肪も減らしたい)】
これが最も多いニーズだと思いますが、正直なところどちらを先にやるかよりも、有酸素の強度・時間のコントロールのほうが重要です。
有酸素を高強度・長時間で行うと干渉効果が出やすくなります。
同日に行うなら有酸素は低〜中強度で20〜30分程度に抑え、筋トレを先にやるのがバランスがいい選択です。
同じ日にやるべきか、別の日にやるべきか
ここも気になる人が多い疑問です。
干渉効果を最小化したいなら、別の日にやる・または同日でも6時間以上の間隔を空けるのが理想です。
午前に筋トレ、午後に有酸素というスケジュールが取れるなら、それが最も干渉が少ない方法です。
ただし現実的には毎日運動できる時間が確保できない人も多いと思います。
「週3日しか運動できないのに、筋トレと有酸素を別の日にしたら筋トレが週1〜2回になってしまう」という状況なら、同日にやるほうが総合的にはプラスになります。
干渉効果の影響は「同日にやること自体」よりも「有酸素の強度・時間」のほうが大きいという研究が増えています。
同日にやるなら有酸素をコンパクトにまとめる工夫のほうが優先度が高いです。
よくある間違いと改善ポイント
×「ウォームアップに20〜30分のランニングをしてから筋トレしている」:ウォームアップと有酸素トレーニングは別物です。ウォームアップは5〜10分の軽い動的運動で十分。本格的な有酸素をやってから筋トレに入ると、筋トレのパフォーマンスが落ちます。
×「筋トレ後に1時間以上の高強度ランニングをしている」:筋肥大を狙っているなら、有酸素の過剰な追加は逆効果になりえます。筋トレ後の有酸素は20〜30分の低〜中強度にとどめましょう。
×「有酸素と筋トレを完全に分離して、どちらかしかやらない時期を作っている」:長期間どちらかを完全にやめると、一方の能力が落ちます。強度・頻度を調整しながら両方を継続することが現実的です。
まとめ
- 筋トレと有酸素を同日に行うと「干渉効果」が起きる可能性がある
- メカニズムはAMPK(有酸素で活性化)がmTOR(筋合成スイッチ)を抑制すること
- ただし干渉効果の影響は研究上それほど大きくなく、有酸素の強度・時間のほうが影響が大きい
- 筋肥大・筋力向上が目的なら筋トレを先、持久力向上が目的なら有酸素を先
- 体脂肪を減らしたい場合も筋トレ先が有利(グリコーゲン消費後に脂肪が使われやすくなる)
- 同日にやるなら有酸素は低〜中強度・20〜30分程度にとどめる
- 理想は別日か6時間以上の間隔。現実的には有酸素の強度管理を優先する
- ウォームアップに長時間の有酸素を入れるのはNG
おわりに
「どちらを先にやるか」という問いに対する答えは
目的によって変わるです。
でも正直に言うと、順番よりも「有酸素をどれくらいの強度・時間でやるか」のほうが体への影響が大きいかなと思います。
体の変化はトータルの消費で決まりますからね。
こだわりすぎず、自分の目的と生活スタイルに合わせた組み合わせを見つけてください。
継続できる方法が最強の方法です。
以上、AK-TONBOでした。